第9回「クエン酸」
細胞内に、ミトコンドリアという器官があります。
「身体を動かすエネルギーを産生するのが、ミトコンドリアである」「ミトコンドリアの遺伝子は、必ず母から遺伝される」という噂を聞いたことがあるかもしれませんが、その噂は真実です。
ミトコンドリアは、クエン酸を使って、身体を動かすのに必要なエネルギーの元であるATP(アデノシン三リン酸)を生み出しているのです。そして、この能力は、母の遺伝なのです。母が長距離走に強ければ、その子供は男女とも長距離走に強くなります。
クエン酸の化学式は図のとおりで、炭素が6個つながっています。このクエン酸が、ミトコンドリアの中で次々と化学反応を起こし、2分子の酸素を取り込んで、2分子のATPと2分子の二酸化炭素を生み出します。一連の化学反応が終わると、2つの炭素原子を失い、炭素が4つつながったオキザロ酢酸になります。
このオキザロ酢酸は、ミトコンドリアの中でアセチルCoA(コエンザイムエー)と結びついて、元のクエン酸に戻ります。そして、このクエン酸が、またしても次々と化学反応を起こし、2分子の酸素を取り込んで、2分子のATPと2分子の二酸化炭素を生み出します。これを延々と繰り返して、筋肉を動かすのに必要なATPを作り出しています。
アセチルCoAは、脂肪や糖が分解されて出来上がります。つまり、アセチルCoAを作り出すために、脂肪や糖を分解するのです。だから、運動すると、脂肪が分解されるのです。運動後には、レモンなどのクエン酸含有食品を欲することがあると思います。
クエン酸を多く含む食べ物は、レモンの他に、グレープフルーツやアセロラ、梅干しなどがあります。