第8回「グリシン」

グリシンは、生体内で合成される非必須アミノ酸の一種で、分子構造的に最小のアミノ酸です。
人体内では、コラーゲンの主原料であると同時に、ヘモグロビンの大元原料、抗酸化物質のグルタチオンの原料としての役割を果たします。
また、コラーゲンを構成するアミノ酸の3分の1がグリシンであり、コラーゲン合成には大量のグリシンが必要になります。グリシンは体内で合成できますが、そのグリシンが不足気味になると、優先的にヘモグロビン合成に用いられるため、コラーゲン合成が進まなくなります。その結果、背の伸びの低下、肌質の衰えをもたらします。

このグリシンは、一般のタンパク質系の食物の中の含有量は少なく、ゼラチン質のコラーゲンの中に多く含まれています。一言でいえば、「皮」の中に多く含まれており、鮭皮抽出物には、特に多く含まれています。従って、食事から摂取するには、かなり特殊な食生活が必要となります。体内では、グリシントランスアミナーゼの作用により、グルタミン酸やグリオキシル酸から合成されます。
もともと神経伝達物質としての重要性が知られていましたが、睡眠を深くする効果にも注目されています。また、マリンコラーゲンなどの化粧品が肌質の向上をもたらすことから、角質層の無構造なタンパク質の構造の中で、グリシンの割合が多いかどうかで肌質が変化することが知られるようになりました。

グリシントランスアミナーゼの酵素活性は遺伝の影響を受けますので、体内でのグリシン合成能力には個人差があり、それによって肌質が変わるのであろうと推測されています。