第16回「カプサイシン」
唐辛子の辛みの主成分が、カプサイシンです。図のような構造をしています。
「辛い」というのは、神経への刺激としては、痛覚の刺激に相当します。つまり、舌、喉、食道、胃に痛みを引き起こす成分であるといえます。この痛みを我々は、「辛い」と感じているのです。
日頃の食事での摂取量なら、舌への痛みの刺激は脳に伝達され、その脳からの指令により、副腎からのアドレナリン分泌が促進されます。アドレナリンというのは、「闘う」という気分の時に分泌されるホルモンで、発汗、および心悸亢進作用をもたらします。また、脂肪分解酵素の活性を高め、脂肪燃焼を進めます。少量の摂取なら、ダイエットに有効といえるかもしれません。
昔から、カプサイシンを注射で皮下に大量投与すると、内臓感覚神経(内臓の状態を中枢に伝える神経)が破壊されますので、動物実験で利用されることがありました。カプサイシンは、少量なら痛みの刺激を与えますが、大量だと痛みを感知する神経の感受性を破壊することがあります。破壊された以後は、痛みを感じなくなります。このことを利用して、局所の痛みの治療薬にしようという研究がなされています。
胃への刺激が、発ガンと関係するかどうかが気になります。唐辛子を大量に摂取するメキシコの研究では、多量摂取者は、少量摂取者の1.7倍の発ガン率があったとのことです。
なお、ごま油に唐辛子を加えてエキス抽出したものが、ラー油です。