第2回「アルギニン」
治療薬としてのアルギニンについてから、まず、お話したいと思います。
尿毒症という単語を、聞いたことがあると思います。腎不全などで、体内に毒性物質がたまる現象です。ここでいう「毒性物質」というのは、アンモニアのことです。人体にとって、アンモニアは毒性物質なのです。
先天的に、このアンモニアが蓄積してしまう病気があります。先天性尿素サイクル異常症といいます。その治療に用いられるのは、このアルギニンです。アルギニンは、アンモニアを処理する作用を持つのです。この作用を持つことから、アルギニンの研究は、医学の中で重要なウェイトを占めてきました。
さて、人体を構成するアミノ酸は、20種類あります。このうちの一つが、アルギニンです。体内で合成することができますので、口から摂取する必要がない非必須アミノ酸に分類されています。しかし、このアルギニンが多めに投与されると、人体の健康にプラス効果のある作用を及ぼすことが知られています。
アルギニンは体内では、タンパク質を作り出す作用を高める働きを持ちます。だから、コラーゲンの合成能力を高め、外傷や褥瘡の治癒を促します。この「タンパク質を作り出す作用」のことを蛋白同化作用といいますが、この作用を持つことが、サプリメントとしての有用性を確保します。筋肉発達、コラーゲン増生による肌の張り・弾力の向上に役立つのです。
ところで、細胞の核を構成するタンパク質の成分アミノ酸としては、最も含有量が多いことが知られています。だから、細胞分裂の際に多量のアルギニンが必要になります。このことは、子供の発育に大きく影響します。食事からの摂取が不足すると、骨端線における軟骨細胞の分裂増殖と肥大化に悪影響を及ぼし、身長の伸びが悪くなります。
また、診療現場においては、アルギニンは成長ホルモンの分泌刺激剤として用いられています。
アルギニンは、三大栄養素の一つであるタンパク質の一種に過ぎず、通常の食事でも一定量が摂取されていますが、単独投与で人体に種々の作用を施しますので、第4栄養素の一つとして、君臨する栄養素として認定されています。