第11回「ビタミンB1」
ビタミンB1を世界で最初に発見したのは、日本人の鈴木梅太郎です。米糠に脚気を予防し回復させる成分のあることを突きとめ、抽出に成功しました。年間実に1万5千もの日本人が、脚気によって命を落としていた時代です。まさに世紀の大発見でした。しかしながら大正時代に入るとさらに蔓延、年間2万7千人の死亡記録も残っています。脚気という病、今でこそなじみが薄くなりましたが、その昔は堂々たる国民病だったのです。明治天皇も患っていたといわれています。
炭水化物が分解された糖質は、私たちが生きていくためのエネルギーの源です。糖質がエネルギーに変換されるまでには多くの段階があって、その都度いろいろな酵素が働いています。しかし単独では働かず、それを助ける補酵素というものが必要です。それこそがビタミンB1なのです。ということは、ビタミンB1が不足すれば糖質も少ししかエネルギーにはなれず、おかげで元気は出ないし臓器では障害が起こってしまいます。
特に中枢神経や末梢神経、脳などは糖質が唯一のエネルギー源で、他のものでは代用がききません。だからビタミンB1が不足すると、集中力は落ち、イライラしたり精神が不安定になったりするなど、神経が正しく機能しなくなります。うつ症状になったりもします。倦怠感を感じ食欲不振、動悸、息切れ、手足のしびれ、むくみの症状があれば、これが脚気です。症状が進行すると心臓の機能が著しく低下して、心不全になることもあるから恐いです。
お酒を大量に飲む人は注意して下さい。体内でアルコールなどの糖質を分解するのにビタミンB1を使いますから、どうしても不足しがちになります。インスタント食品や清涼飲料水、菓子類をよく食べる人も要注意。糖質が大量に含まれていますから、その分解にやはり大量のビタミンB1が必要になります。
困ったことに、ビタミンB1は体内に蓄えることができない栄養素です。日々摂り続ける必要があります。麦飯もいいですが、豚肉にたくさん含まれています。ハムでも大丈夫です。たまには奮発して、ウナギやスッポン料理に舌鼓を打ってみますか。