第1回「クロム」
ミネラル(金属元素)の一種で、レバー、エビ、ビール酵母に多く含まれています。穀類にも含まれていますが、精製過程でほとんどが失われてしまいます。医師の手元の20~30年前の医学書には、「クロム含有耐糖因子により、糖尿病患者の耐糖能の改善が見られることから、クロム欠乏は、糖尿病の原因の一つと考えられる」と明記されています。研究が進み、今では、すい臓から分泌されて血液中を巡るインスリンが、作用する臓器(肝臓、筋肉など)の細胞表面のレセプターと結合する反応を補助する耐糖因子の構成成分であることが、判明しています。
自然界には、3価のクロム、6価のクロムが存在しますが、人体に有用なのは、3価のクロムです。
脂肪細胞を顕微鏡標本にしてクロムで染色すると、脂肪細胞が二種類に分類されることがわかります。クロム染色で褐色に染まるのが、褐色脂肪細胞、染まらないのが、白色脂肪細胞です。染まるということは、クロムと反応しているということであり、クロムが特殊な作用を及ぼす脂肪細胞があることを意味します。
クロムと反応する褐色脂肪細胞は、熱を産生する細胞であり、中性脂肪をため込む一般の脂肪細胞とは異なっています。血液中の中性脂肪や糖などのエネルギー源を取り込んで、熱に代えるのです。「痩せの大食い」の人の身体を調べると、食後30分くらいで体温が急上昇しているのが観察されます。摂りすぎたエネルギーを褐色脂肪細胞が猛烈に働いて、熱に代えて消費してしまっているのです。一般に褐色脂肪細胞の活性度が強い体質の人は、たくさん食べても太りません。
以上のことから、クロムは、糖尿病治療やダイエットに有用です。これほど明確な作用を持っていながら、自然界に普通に存在する成分であるために、医薬品には認定されておらず、医師が関心を示さないのも特徴です。
生まれたての赤ちゃんの身体には、100gもの褐色脂肪細胞が存在しますが、20歳になると、40gに減っています。この40gの褐色脂肪細胞の活性度は、加齢に伴い、低下します。年とともに太りやすくなるのは、それが原因です。
糖尿病治療やダイエットの目的においては、1日の摂取量は、200~400μgが最も適切です。この摂取量において、副作用らしいものはありません。